クリーニングから洗濯へ。その1
よく、これどうやって自分で洗えばいいですか?と質問される事があります。
最近は、クリーニング屋さんが洗濯の仕方や染み抜きの仕方を教える人が増えてきました。
でも、僕には無理です。
だって、責任取れないもの。
教えるのは簡単なんです。
でも、教えないのには理由があります。
一つは、本来洗うのには複雑な知識が必要であるものなんですね。
素材、デザイン、色合いなどで、同じものでも洗い方が変わってきます。
洗い方が変わる理由は、そのまま洗うと失敗するから。
その細かい区別を、消費者の方が判断出来ないと思うんですよね。
特定の商品に絞れば、十分出来ます。
ですが、その商品にだけとどまらないのが、一般の方々です。
違いが分からないから他へ安易に応用し、失敗してしまう事もあります。
まだ失敗ならいいですが、もし何らかの事故に繋がるような事になったら、僕らは責任が取れません。
お客様が自己責任でやってみればいいんだよ、どれだけ大変かやってみればいいんだよ、そういって無責任に教えるのは簡単です。
でも、教えないことが、クリーニング師の責任である、と言うこともあると思っています。
もうひとつ、教えるのに躊躇する理由があるんです。
それは、今までクリーニングを利用して着ていた服を、自分で洗濯して着る事が出来るか?と言う問題があるからです。
初めから、洗濯をしていたのなら問題はありません。
どんなに優秀な洗剤や出来ても、洗濯機が出来ても、クリーニングには及ばないんです。
人の評価なんて、その人が感じたもの。
自分も同じように、いいと思えるかは別なんですよね。
・・・・・・・・・、とここまで強気に書いてきました。
所が、先日、あるお客様に言われて洗濯の仕方を教えたんです。
今まで僕があずかってクリーニングをしてきて商品。
もう何年も洗っていたので、そろそろ普段着におろしてもいいし、まだクリーニングしておしゃれ着として着用しても大丈夫、そんな微妙な服があったんですね。
お客様に、この服、普段着に下ろすかクリーニングするかどっちがいいですか?と質問をされました。
僕は微妙な商品である、と言う事を伝えると、お客様はこうおっしゃったんです。
それなら自分で洗ってみたい。
品物自体は洗えるもの。
ですが、今までクリーニングして着ていた人が、自分で洗って着られるか?と言うと難しいと思うんですよ。
でも、本人が着れる、と言うのなら、着れちゃうと思ったので、その商品限定の洗い方を説明しました。
そして、翌週。
集配に呼ばれまして、お伺いすると、先週、洗い方を説明した服を着ていたんです。
お客様は、すかさず、僕にこういいます。
みてみて、初めてにしては上出来でしょ?
確かによく洗えています。
でも、やはり水で洗ってしまったために、不自然なしわがあちこちに・・・・・。
僕が、やっぱり水で洗うとこうなりますよね、と言うと、今までたたんでおいたからそのしわだから平気、との事。
僕はプロですから、畳みのしわか、洗ったために出来たしわかの区別がつきます。
そこでいい合いをしても仕方がないので、そのまま他の品物をお預かりして、返って来たんです。
そして、先日、集配に呼ばれたのでお伺いしてきました。
・・・・・・・・・、続きは明日。(笑)
さて、どうなったでしょう?
| 固定リンク | 0
コメント
こんにちは。
ご無沙汰しております。
お客様に「これ、家で洗えますか?」とお声かけを頂くことが年々増えている気がします。
飾りのリスクを気にされてのことや、節約のためなどが大きいように感じます。
クリーニング表示を一緒に確認していただいて、表示のご説明をさせて頂くことしかできないのですが、これまでにいろいろな洋服に触れてきた経験でなんとなく、これは仕上げが難しいのではないかと感じる服が多々あります。
その場合、表示のご説明のあとに、ご自宅では仕上げが難しいかもしれない旨、お話しします。自然乾燥でシワがそのまま残りそうだったり、ふんわりとした仕上がりが望めないもの、ドライか手洗いの表示でもデザイン的に水につけちゃうと自宅では仕上げが大変だろうな、と思う服など。
ただ、あくまでも「だと思います」な表現しか出来ませんので信用性に欠けるのですが……(汗
たまに、どう考えても水洗いしてしまうと自宅では仕上げられないでしょう…というものが手洗いOKだったりすると、とても不思議でたまりません。
そうそう、素材がキュプラやシルクでも水洗いOKになっていると、水洗い不可なキュプラやシルクとどう違うのかと、いつも首をひねっています。
何年経っても、本当に日々勉強の奥深い仕事です……。
投稿: 浅美 | 2014年10月 1日 (水) 12時55分
浅美さん、ご無沙汰しております。
多分、どこのクリーニング屋さんでも聞かれていると思うんですよ。
僕らが思うのとお客様が思うのとでは違うんですよね。
僕らにはアイロンが必要な服でも、お客様はこんなひらひらした服にアイロンなんて必要ないでしょ、とか思っている。そこにギャップがありますよね。
僕は、仕上げ云々よりも、水につけたときの風合いの変化を説明をします。
ノーアイロンで着ることが出来る人は多いんですが、それでも風合いが変化するのを嫌がる人が多いんです。
水につけるということは、それ自体繊維が膨れたり縮んだりして変化を起こします。まさかそんなことが起こっているとは思わないんでしょうね。
水洗いできるシルク、レーヨン、キュプラ、難しいでしょうか?
そんなに難しく考える必要はないんです。
これらに加工が施してある、と言うだけ。
縮むなら縮まないようにしてあるか先に縮ませてあるか。
毛羽立ってしまうなら、毛羽立ちの元を薬品で落としてしまうか、毛羽立たないように表面に加工をするか。
要は、洗った時に起こる問題を起こらないように加工しているだけ、と言うことですね。
水につけたら、溶けてしまう、なんていうものが出てきたらそもそも洗えない、と言うことになるかもしれませんが、おそらくそんなときでも、水に濡れても問題のない樹脂か何かで固めて洗えるようにしちゃうんだと思います。
素材表示や洗濯表示は、あくまでも方向性を見るものです。
素材と特徴と洗濯表示が違うことはよくある話。
そこから、色んな事を類推して、クリーニングをしていきます。
クリーニング屋さんが洗うだけでなく繊維の勉強も必要なのはこういうところからですね。
投稿: boribori | 2014年10月 3日 (金) 03時08分