ある着物業界の人のツイッターを見ていた感じたことがありました。
その方は、着物のメンテナンスをしている方。
昔ながらの技法で丁寧に着物を取り扱っているようです。
その人は、ドライクリーニングを真っ向から否定し、クリーニングそのものを否定しています。
読んでいると、もちろん偏見もかなりあるのですが、それ以上に知識も豊富、着物への思いも熱いのがよくわかるんですね。
この人がクリーニングを否定する大きな理由は、着物に関してですが、長く着る事を念頭に置いた仕事をしていない、という事のようです。
決してそんな事はないのですが、着物については、昔ながらの技法の方が勝っている、と言います。
勝っている理由は、余計なことはせず、出来るだけ着物に負担を掛けずにメンテナンスをすること。
そのメンテナンスは、何十年たってもまた直す事が出来る、と言います。
一部のクリーニング屋さんのやり方では、その時は直っても、その後の修復が出来ない、と怒っていました。
クリーニング業界の方とこの方とのやり取りを見ていて、思う事があります。
それは、商品も変わってるし、お客様の望みも変わっている、という事。
着物の持つ意味も変化しているんですよね。
着物も昔とは違い、簡単に作られるものも出てきました。
パソコンのプリンターのように、インクジェットで柄を印刷するものもあります。
商品の作り自体がそういうものであると、修復も、それに合わせたものになるのが普通・・・・・、だと思うのですが・・・・。
また、服に関する意識も今と昔とでは相当違います。
普通の服でさえ、人によっては二年着たらもうだめだよね、なんていう人もいる昨今、着物はいったいどれくらい持つと思われているのかな?と思うんです。
5年?10年?30年?何代も後の時代になっても着る事が出来る、と思っている人はどれくらいいらっしゃるのかな?って。
それくらい長く持たせようとすると、当然それ相応のメンテナンスが必要になります。
合わせてメンテナンス費用も・・・・・、そこにコストが見合うと思っていただけるのか?という事もありますよね。
何よりも、そこまでして着物を着たいという人がどれくらいいるんだろう?と思うんです。
これは着物を着る文化を否定しているのではなくて、着物をどういう風に受け止めているのかな?という素朴な疑問。
同じようにクリーニングについても、クリーニングをすることをどう言う風に受け止めているのかな?と考えます。
いくら長持ちをするよ、と言われても。
きれいになるよ、と言われても。
それを求める文化がなければ、いい技術でも必要はないんですね。
よくある話だと思うのですが、たった一回使えればいいものだから、百均で済ます、そういう考え方ってあると思います。
ドライバーとかそうですよね、このねじを回せるだけでいいからそんないい工具は必要ない、とか。
でも、これがプロなら毎日使うものだからこそ、いいものを買おうと思うわけで。
最近の衣類の修理も、昔ながらのやり方できちんと直すよりも、簡易的に修理をすることを望む人が増えています。
全部がそういう簡易的な流れに向かっていっても困るのですが、これこそ時代の流れ、だと思うんですよね。
そう考えると、こうじゃなきゃいけない、というのは無理があるんですよ。
だって、お客様が求めているんですから。
しかし、反対に、ちゃんとしたい、いいものを欲しい、という欲求を持つ人もいらっしゃいます。
その人たちのために、昔ながらの技術はなくしてはいけない、と思うんです。
着物業界の人の言う事もわかるんですが、お客様が求めているものも千差万別な昨今、提供するプロの仕事も千差万別になっていくのが普通だと思います。
できれば、そこに、各々のお店の特徴がよりお客様に伝わるといいかな、とは思いますが。
今はどのお店も技術を売りにしていて、いい仕事をしているといいますが、中身はみんな別々。
簡易的な仕事を売りにしている事を、堂々と言えばいいのにな、と思ったりします。
簡易的なものを提供するのは別に悪いことではありませんからね。
高い品質を望むお客様もいれば、簡単にやってくれればいいよ、と望むお客様もいらっしゃいます。
なにもいいものばかりが望まれているわけではない、という事ですね。
仕事に対するこだわりも人それぞれですが、何となくもったいない気がしました。
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