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技術が高いことが利用される理由じゃないんだよね。

ここ、今日も洗濯日和はお客様や消費者の皆様に向けて発信をしております。
今日は、クリーニング屋さんに向けて・・・・。



先日、洗濯王子が踊るさんま御殿に出演をしました。


彼の活動に賛否両論があります。
クリーニング屋さんが洗濯の事を教えるのはいかがなものか、とか。
クリーニングの利用が減っていくではないか、と。


反対に、洗濯の事を教える事でクリーニング屋さんの信用が増し、利用してもらえる、とか。
あの程度の事で利用されなくなるようなクリーニング屋さんはいったいどんな技術なんだ?と。



結論から言いますが、需要、減りますよ。
でも、理由は技術が高い低いが理由ではありません。


昔から言われているこの話、どっちの意見も中途半端で突っ込みどころが満載なんですね。
そして、クリーニング屋さんの驕りが見え隠れしていて、僕は好きではないんです。


僕もクリーニング屋さんが洗濯の事やしみ抜きの事を消費者に向かって教えるのは反対です。
ただ、教えるな、と言いたいのではなく、クリーニング屋さんが消費者に発信をするのは別の事だよね?と思うんですね。


クリーニング屋さんはクリーニングの良さを伝えるべきで、クリーニングのよさをクリーニング屋さんが言わなければいったい誰がクリーニングの良さを伝えるんだ?と思うわけです。
クリーニングが洗濯の延長と考えると、当然僕らには洗濯の知識もあります。
以前なら教える事も時と場合によるなと思っていました。
でも、洗濯王子が出てきてから考えが変わりました。


彼が洗濯の話をしてくれるので、僕らがする必要はなくなったんです。
お客様に媚びるために、洗濯の話をすることもなく、純粋にクリーニングの話をする事が出来るようになりました。


そう、洗濯やしみ抜きの話をしている人の中でも、実は二種類の人間がいます。



一つは、日本人は洗濯の事をよく知らないので、知識を教えながら、クリーニングと洗濯を上手に使い分けてほしい、と思っている人。



もう一つは、洗濯のやり方を教える事でお客さんに気に入ってもらい、自社を利用してもらいたい、と思っている人。



同じようにやっていても目指すところが違うので、当然話している内容にも違いが出てきます。


洗濯王子は、純粋に洗たくの事をもっと知ってもらいたい、と思って活動をしているんです。
他の人とは違います。



それでも彼が活躍をすれば、クリーニングの需要は減ります。
その理由は、やり方を教えているからではなく、自分でも洗える、という期待感が強まるから。
今まではどう扱っていいかわからなかったけど、何となく洗えるような気分になるのでやる人が出てきます。

これを裏付けるように、彼が出している本を買う人はたくさんいますが、実は読んでいない人もたくさんいます。
でも、何となくで洗ってしまう人もたくさんいるのです。


クリーニング屋さんが洗濯のやり方やしみ抜きのやり方を教える、一番の罪は、気分的に洗えるんじゃないか?という希望的観測を与えてしまう事。
でも、服を洗うっていろんな条件が重なり合うのでそんな簡単ではありませんね。
きちんと理由を持って洗ってくれていればいいんですが、そうでない人が増えていく事が問題なわけです。


こういう話をすると、クリーニング屋さんは必ずこう言います。


失敗すればわかるよ、と。



失敗ってなんでしょう?
どれが失敗なんでしょう?


まず、それが分からないんですよね、消費者の皆さんは。
多少縮んでも着ちゃうし、色が少しおかしくなっても失敗とは思わず、商品が悪いと思うし、この程度なら着れるわ、と洗いに対する品質も下がっていく。


この程度でいいわが蔓延していってしまうんですよ。

さらに、洗ってもどうせ長持ちしないんなら、と、ファストファッションを買って一年で廃棄をしていくという使い捨ての文化が浸透していくんです……、思い当たるでしょう?


クリーニング屋さんがきちんとクリーニングのいいところを伝えてこなかったので、こうした文化が出来上がってしまったんですよ。
ここは素直に反省をした方がいいですよね。



誰かが洗濯のやり方を教えるのを見て、プロはもっと高い技術で洗っているんだから問題ない、と思っている人は大間違いです。


技術が高いからと言って利用されるわけではありません。
それは職人の思い上がりですよ。
消費者の価値観で必要がなければどんなにいい技術でも、技術過剰、オーバースペックです。
家の洗濯で必要十分と思っている人に、いくらクリーニングの方が技術は上だよ、きれいになるよ、と言っても今で十分だから、となるのが当たり前。

腕がよければ選んでもらえる、というのは職人が陥りやすい罠ですよね。



じゃあ、洗濯王子の活動を批判すればいいのか?というと、それも間違いです。


彼におかげで洗たくの話を僕らが率先してする必要がなくなったんですから。
彼が代わりに、きれいにする、という事を啓蒙してくれているわけです。
僕らクリーニング屋さんがやる事は、クリーニングの良さを伝える事。
そこに集中できるようになったんです。


そもそもが、クリーニングのいいところを伝えようとすると、技術的な話ばかりになるのがいただけません。
先ほども書きましたが、価値観の違う人にいくら技術が優れていると言っても、必要のないものは興味がないんですよ。
なのに、いつまでたってもクリーニング屋さんの言う事は、きれいになる、ばかり。
確かにきれいになるんだけど、お客様からすると、それはプロなんだから当たり前の話なんですよね。
でも、必要なスペックではないんです。


例えば、車業界で考えてみましょう。


世の中が、車よりもエコなウォーキングや自転車での生活が流行りだしたときに。
どんどん車離れが加速していった時代に。
技術的な話はほとんどしませんよね?


歩くより速いですよ、とは言わないし、自転車よりも荷物が積めますよ、とも言わない。
そうい価値観で自転車やウォーキングを選んでいるわけではないから。
不便でも遅くても、別の価値観から車を選んでいないんですね。

すると、車業界がやっている事はどんな事か?というと、車のある生活がいかに豊かなものか、自分の人生を豊かにしてくれるか、をアピールします。


ただ、便利というだけでなく、車がある生活はいろんなものが得る事が出来、世界観が変わるよ、と伝えていくわけです。



技術的な話は実はその先の話で、興味を持ってくれているから、速いとか積載量が多いとかつながっていくんですよね。



さて、これをクリーニングに置き換えて考えてみたら、どうでしょうか?
ぼくら、おかしいでしょ?



洗濯やしみ抜きの事を教える意味をもっとよく考えないとだめです。
社会貢献のためにやるのは大賛成、でもそれは結果的にクリーニングの需要が減っていきます。
それをきちんと理解したうえで、僕らが別に必要のあることをやっていかないと、本当にクリーニングが必要のない世界が来てしまいますよ?



職人の驕りを捨て、真摯に向かっていかないとだめですね。
何でも言える事ですが、思いあがってはいけないってことでしょうね。



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