技術代を叩いたらどうなるか?
値段は安いに越したことはありません。
出来るだけ安く買いたいのは、消費者なら普通の事ではないでしょうか?
うちの猫が野良猫と間違われてボランティア団体に強制手術をされてしまいました。
昨日、その説明と謝罪へ来ていただいたのですが、その時の話の中で一つ疑問に思う事があったんです。
協力動物病院に手術を依頼していただいている。
普通は数万円する手術を5000円でしてくれる。
腕がよく、上手な先生なので、一日で放せる。
調べてみると、こうした活動に協力をして安い価格で手術を請け負っている動物病院というのは案外少ないんですね。
なんで少ないのか?気になります。
また、破格の値段で受けているけど、それってどうなの?という思いもします。
僕は商売人であり技術者であり、職人です。
その立場から考えると、おかしいんです。
もし、クリーニング代を安くしてください、と預かった時に言われたとしたら。
多分その場で、うちよりも安い所はあるのでそちらを探したほうがいいかも、と提案をするでしょう。
それでも受けてくれ、と言われたら。
やはり受けないと思うんです。
すいません、うちはこの値段でやっているので、ご理解ください、と説明すると思います。
これには理由があります。
クリーニングにかかるコストは皆さんが思うよりも高いです。
一度できれいにならない事もあり、きれいにするために何度か洗い直しをすることもあります。
元々が、品質を良くするためにやっている事なので、それを維持できないような値段では受ける事が出来ません。
また、他のお客様もいらっしゃいます。
あの人は安くて何でうちのは高いのよ、と言われたらそのお客様に申し訳ありません。
お客様を区別や差別することはしたくありませんので、皆さん同じように設定するようにしています。
そして、値段というものは何か?と考えた時。
値段というのは、必要な資材や機械があり、この技術を習得したり品質を上げるためにかかった費用であり、この仕事の価値そのものです。
値段を下げる、という事は、その仕事そのものに価値がない、と言っているのと同じです。
そして、最後。
自分が責任を持てなくなってしまう可能性がある、という事。
僕は聖人ではないので、いつも正しいことを選べるかわかりません。
本来なら、値段関係なくやるのが、商人の心意気だろう、と言われるかもしれません。
が、この値段ならこんなもんだろう、という気持ちが出ないとも言い切れません。
これだけのお金をいただいているんだから手を抜けない、これも真実の一つです。
もし、いろんな事情からものすごく安く受けてくれ、と言われて僕が受ける気になったとしたら。
その時はお金はいただきません。
仕事そのものを無料でやらせてもらうと思います。
中途半端にもらうのではなく、この仕事全部僕からのプレゼントです、くらいの気持ちで受けると思います。
多分職人はほとんどがそうだと思うんですよ。
安くやれと言われたら、その範囲内の仕事をします。
手を抜く人もいるでしょう、効率化で頑張る人もいるかもしれません。
資材をケチってやる人もいるかも。
でも、もし、お客様の何かしらの心意気に感銘を受けて、仕事を受けるのなら、その時はお金をいただくようなことはないと思います。
その仕事そのものが奉仕です。
さて、職人としての僕の考え方からすると、破格の値段で受けている動物病院には何かある、と思います。
昨日の夜、うちのかかりつけの動物病院へ猫を連れて行ったんですが、びっくりするような話を聞きました。
これ、縫合が汚い・・・・・。
素人目にも上手とは言えない縫合なんです。
そして、次に出た言葉がびっくりでした。
これ、埋没法ではないよ。
ボランティアの方からの説明で、とても腕のいい先生で埋没法というやり方でやっているので、傷口も小さく、術後一日で放せるのだ、と言っていたんですが、それが違ったんだそうです。
さらに、普通ならあり得ないような位置を切っているために内臓がおかしくなっていないか?不安がある、と。
通常、ここでは切らないんです、と言います。
ここを切る理由は、簡単だから。
でも、これは猫にとっては負担だし下手すれば死んでしまう可能性もある、と。
やっぱり、と僕は思うんです。
安く請け負います、と言って気持ちにこたえたいからとやっていて、お金を取っているという事は、絶対どこか何か抜いているはずだって。
どうやらこの動物病院は手を抜いたみたいです。
もう一度言います。
きちんとやっている所ほど、安易に値段は下げませんし、その仕事に責任も持ちます。
手を抜くような仕事をするくらいなら、そもそもやらない、というのが職人の考え方です。
職人には職人のプライドがある。
馬鹿にするな、といいたい。
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