化粧をする服。
僕らクリーニング屋さんには共通した認識があります。
それは、服を元のまま洗って返す、という事。
これは、クリーニング業法という法律にも書かれていまして、分解などせずに原型のまま洗う、という事がクリーニング屋さんの条件なんです。
たまに、外して洗いました、と書いているクリーニング屋さんがいますがらそれをやっちゃうと厳密に言えば、クリーニング屋さんの仕事ではなくなります。
でも、必要に応じて外して洗わないといけないものもあるので、法律をなんとかするか、作る方がしっかりしてもらうかしないといけないんですけど。
何をもって元のまま、というか、この議論は昔から今でもずっと続いています。
簡単に言うと、すっぴんがいいのか、化粧したのがいいのか、というような話。
服も化粧をしているんですよ、実は。
例えば、柔らかいものはより柔らかくしていたり。
肌触りを滑らかにしていたり。
よりいい色を見せるために余計に色を乗せたり。
しかし、これらはいわゆる化粧なので剥がれてしまいます。
すると、生地本来の顔が出てくるわけですね。
仮に、元があまり良くなくて、化粧をするのならわかるんですよ。
でも、今は、元に別に問題もないのにさらに化粧をしているケースがあります。
過剰な柔らかさ、過剰な肌触り、過剰な色。
本来ありえないようなものを演出して、高級感を演出するわけです。
で、着ているうちや洗った時に、それらが剥がれて元の顔が出てくる。
買った時と違う、そんな事が起こったりするわけですね。
で、ここで僕らは悩むんですよ。
どれが元の形なのか?で。
化粧をしたのが元の形なら、僕らも化粧をして服を返してあげなければいけません。
化粧の剥がれたものが元々の形ならそれを維持してあげるのがいいのかもしれない。
ナチュラルがいいのか、加工したものがいいのか。
でね、なぜ悩むのか、もう1つ理由があるんです。
それは、今から20年ほど前は化粧をした服は欠陥品扱いだったからなんですね。
着ていて取れるような加工、洗って取れるような加工は、服の機能を維持できていないので欠陥品なんです。
その当時は、アパレルメーカーにクレームが入ってますし、事故品を集めた本の中にもしっかりと説明がされています。
しかし、何年たってもアパレルは改善はしませんでした。
数年経つと、また同じ加工を繰り返して同じ事後が多発する。
その繰り返しだったんですね。
今はそのことを突っ込む人は少なくなりました。
代わりに、化粧をしたものが普通と思う人が増えて市民権を得たわけです。
柔らかくする加工剤や肌触りをよくする加工剤は僕らも持ってます。
でも、やはりそれらは生地本来のものと全然違うんですよ。
それでいいのか?と僕らはいつも思います。
どれが正解、というのがないだけに、この問題の解決はないのかもしれません。
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