僕、若い頃からこうなりたいなあ、というのがありまして。
それが、歳をとった時に、あの人は生き字引のようだ、みたいに言われたいなあと思っていたんです。(笑)
要は、いろんなことを知っている、長い間生きているので歴史を体験している、そこから色んな話が出来るようになりたかったんですよね。
でも、日々の生活の中で、そんな風にはなかなかなれません。
みんな同じように歳を重ねてきているので、経験もほぼ同じだし。
いつまでたっても上にも人はいるし、よく言えばいつまでも若手みたいな感じに思っていました。
自分の記憶も、10年前でもついちょっと前のようなイメージなので、特に古くて珍しい話だと思ってもいませんし。
それが、ようやく、僕よりも若い子がたくさん出てきて、僕らが若い頃に知ったことを知らない人が増えてきたことで、話が出来るようになってきました。
今日はそんな話。(笑)
前置き長いなあ。
いま、当たり前のようにクリーニングから返ってきたら、ビニール袋を外して保管をしてください、と言われています。
その理由は、クリーニングの溶剤が残っているので、袋を外して乾かさないといけないのと、福良をかぶせたままだと湿気がこもり、カビや変色の原因になる、と。
そんな話になっています。
これね、元々はこんな話ではなかったんですよ。
いつの間にか、話がこんな風に変化してしまったんです。
僕はこの話の大元を知っています。
実は最初、こんな話だったんですね。
大手チェーン店でクリーニングをした後に、お客様が袋をかぶせたまま保管をしていたら、カビが生えてしまう事例が多く出たんです。
その時、個人店のクリーニング屋さんではそんな話は出ていないので、その当時は大手チェーン店のクリーニングが悪いんだよ、と言われていました。
そして、ちょうど同じ頃に、インターネットが普及をし始めて、色んなクリーニング屋さんがホームページを持つようになりました。
そこに、大手チェーン店のクリーニング屋さんが注意事項として、袋は外して保管してください、と書いたんです。
その当時はそれを見た僕は、それは仕事の仕方が悪いだろ、と一人突っ込んでたんです。
ちなみに、その時、カビが生えてしまう原因は、大手チェーン店の仕上げと包装に関係があります。
その当時、大手チェーン店では服に蒸気を大量に当てて荒ジワをとって仕上げた、と言っていました。
で、その直後に、すぐさまビニール袋で包装をしてしまうので、服に湿気が大量に残ることに。
袋の中に湿気がそもそもあるのですから、カビが生える原因になることもある、というわけです。
ここまでなら大手チェーンの話だけで済んでしまったんですが、これから話は転がっていきます。
他のクリーニング屋さんもホームページを作る人が増えてきたんですが、まあ、なんというか、パクるんですよね。
このホームページ、いいなあ、と思うと平気でパクる。
まだ著作権とかの意識がそんなに高くない時代の話です。
パクった時に、注意事項とかもそのまんま使い回しをするんです。
理由も考えずに。
例えば大手チェーン店が似たような仕事をしているのなら、同じ注意事項で構いません。
しかし、個人店ではそのようなことは起こりにくいので、その説明だとおかしくなる。
というか、そもそもおかしいと思いませんか?
だって、溶剤が残っているから、蒸気が残っているからって、それは仕事が完結してないって自分で言ってるんですよ。
本来おかしな話をしているのに、そこに気付かずに使いまわしてしまう方も問題があります。
しかし、この話が広まったのにはさらに別の要因も重なります。
この数年後に、ビニール袋に含まれている酸化防止剤と特定のガスが反応して、服が黄色くなる現象が起きます。
現在はこれもどうしてこうなるのか?理由はわかっています。
製造メーカー側の問題なんですよね、本当は。
ビニール袋を製造してすぐ出荷してしまうと、酸化防止剤がビニールから出てきて、それが服に着いてガスと反応すると黄色くなる。
製造されてから時間があくと変色する問題は無くなります。
例えばこれが他の業界なら、ビニール袋の製造メーカーに酸化防止剤を変えてもらうか、使わないようなビニール袋を開発してもらうなどになるんです。
ところが、クリーニング業界は、それをせずに外してください、という方向に行ってしまった。
これがクリーニングから返ってきたらビニール袋を外してください、という風になってしまった理由です。
この流れを知らない人たちが、プロでもなんとなくそういうものだと認識して広めていってしまった。
それが、今、ビニール袋を外してください、という話になっていってしまったんですね。
なので、きちんと自分のお店の仕事や、外す理由などをよく知っているクリーニング屋さんは、ビニールの袋を外さなくていい、と言います。
当店でも、外さなくていいお店と外さなきゃいけないお店がある、と説明をします。
ビニール袋を外したほうがいいのか?迷った時は、ご利用したクリーニング屋さんへ問い合わせをするのが一番正確です。
ちなみに、うちで2年ほどかけて、ビニールをかけた状態とかけなかった状態の、湿度を計測した事があります。
その時の結果は、ビニール袋をかけてないと、外の影響をもろに受けます。
雨が降って部屋の湿度が上がると当然その影響を受けます。
ビニール袋をしてる方は、外の影響を受けにくい。
雨が降って湿度が上がっても、ビニール袋の中の方が湿度は低いんです。
さらに、服が呼吸できるから、と不織布の袋を使うと、やはり空気の行き来が出来るので、外の影響をもろに受けます。
保管は湿気が大敵です。
外す方が影響が大きいんですよねえ…。
衣替えのクリーニングから返っていた服をしまう時は、一度クリーニング屋さんに確認してみてください。
お店によって状況が違うので、ネットの情報では正しいしまい方はわかりません。
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