新品の服。
クリーニングで、一番の目標というのは、元の形、元の風合いなんですね。
僕らの目指しているものはそこなんです。
でも、現実には元には戻りません。
使用感は残るし、水に濡れれば元のものとは少し変わります。
そもそも、着用しているだけで、元とは随分変わってしまってますからね。
それを、洗って汚れを落とし、形を整えるわけです。
で、さらに、色もなるべく変わらず、風合いもなるべく変わらない様に。
クリーニングをすると質感が下がる、という方にたまに出会いますが、実はそれはちょっと違うんですよ。
買った状態がピークとすると、着用しているうちに質感が下がり、それをクリーニングすると質感が戻るんです。
でも、完全な元の状態までは行かず、少し下がった状態になります。
紙飛行機を飛ばした時に、落ちそうだけど、また上に上がって、また下降して、と繰り返す様な、あんな感じをイメージすると分かりやすいかもしれません。
一応、新品の状態を目指してはいるのですが、たまに思うこともあります。
はたして、新品の状態が一番いい状態なのか、と。
使う人のためにされてないよなあ、と思うことがたまにあるんですよ。
わかりやすい例でいうと、タオル。
タオルの新品って、吸水性がないでしょ?
あれじゃタオルの意味をなさないわけですね。
新しい生地についているノリのせいで吸水性がないんです。
ノリにも種類があって、水を弾くノリもあるんです。
また、僕はよくやってしまうんですが、新しいTシャツをどこかに出かける時に初めて来ていくと、必ずと言っていいほど体調を崩します。
原因はわかっていて、新しいので吸水性がなくて、汗を吸わないから、体に汗がまとわりついて体が冷えるんですよ。
ベタベタして気持ち悪いなあ、と思いつつ、またやっちまったなあ、と毎回反省しています。
一回洗ってしまえばいいんですけどねえ。
使う人の身になったら、そんなノリをつけなければいいのに、と思うんですが、作っている人たちには作っている人たちの理由があるんだと思います。
まあ、吸水性があるということは、湿気を吸うって事ですから、製造して流通に乗せている間にカビたりしたら困るのかな?とも思うんですけどね。
また、売っている状態がそもそもおかしい事もよくあります。
新品の服もアイロンがかけられているんですけどね、ちゃんとアイロンをかけられている服って案外少ないんですよ。
僕らがよくいう、平にべたっとプレスしている服をよく見かけます。
これは…、着づらいだろ?と思うんですけどね?
売る方からすると、きちんとアイロンをかけるとコストが掛かるからそんなこと出来ないよ、と言うことなのかな?
クリーニング屋さんの中には、新しい服を着る前に自分でプレスしてから着る、と言う人もいます。
こんなプレスじゃきれねえ!と言ってたのが今でも印象に残ってます。(笑)
こうなってくると、僕らが目指す新品の服ははたして目指していいものなのか?迷うところでもあります。
ただね、新品の服の状態は微妙かもしれませんけど、その服に込められた意思の様なものはわかるので、こう着せたいんだな、とか、こう言う風合いにしたいんだな、と言うのを汲み取って、クリーニングをする様にしています。
服は本当に千差万別過ぎ。
値段も違えばコンセプトも違います。
これだけ幅の広いアイテムをよくクリーニングしてるよなあ、と思いますもんね。
自画自賛ですが、クリーニング屋さんってすごいと思いますよ。
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