本当に縮んでるの?
プロだから勘違いをしてしまうことってありますよね。
その道の専門家ゆえに、逆に難しく考えたりすること、よくあると思います。
本当はもっとシンプルなのに、とか。
クリーニング屋さんはよく洗濯の相談も受けます。
大抵、縮んだとか匂いがするとか、そんなお話。
クリーニング屋の僕らは、僕らが知っている洗濯の工程の中で、臭いが出る原因や縮む原因を探ります。
しかし、えてして現実はもっとシンプルで、僕らが知ってるような原因とは違い、もっと根本的な問題が原因だったりするもんなんですよね。
でも、僕らの頭の中では僕らの知ってる原因に答えを持っていきたいから、そのための情報を聞き出そうとします。
こうじゃないですか?ああじゃないですか?って。
その結果、問題解決に至らないケースはよくある話。
最近では、生乾き臭の原因はすすぎ不足と言うのも、洗たく王子のTwitterから発覚したりしてますし。
今までは、乾燥工程に問題が、とか洗濯槽が汚れているから、とかそっちの方に意識がいってましたけど、なんの事はない、濯ぎが圧倒的に足りなくて汚れが残っている、という話が原因でした。
すすぎが足りない、なんてクリーニング屋さんの頭の中にはないですからね。
当たり前のように複数回、すすぐものだと思ってるからそこは疑わないんです。
でも、プロではないんだから、一から全て見直す必要があると思うんですよね。
で、今日の本題。
つい先日、乾燥機がとても優秀だ、というTwitterがありまして。
乾燥機大好きな人は、乾燥機をさん付けで呼んでいる、というんですね。
なかなか面白い。
しかし、そこに反論が来るわけです。
乾燥機は縮むぞ、と。
大事な服は乾燥機を使ってはいけない、というわけですよ。
これ、クリーニング屋さんが聞いたら縮む原因がおおよそわかるんです。
例えば、ウール製品を水で濡らした状態で乾燥機にかけると、大人サイズが子どもサイズにまで縮みます。
これはウール製品特有の現象で、フェルト化という現象。
ウールの繊維どうしがからまってぎゅーっと縮む現象なんですね。
他にも乾燥機で縮む可能性のあるものはあります。
温度が高すぎたとか、過乾燥と言って必要以上に乾燥をすると、繊維本来が持っている水分まで乾かしてしまい、縮むことがあるんです。
繊維には公定水分率と言うのがありまして、一定の水分が含まれているものなんですね。
乾燥しすぎると、これまでとってしまうから縮む、という事になります。
と、クリーニング屋さんならここまでは想像すると思うんですよね。
で、これに合わせてアドバイスをすると思うんです。
ウール製品は乾燥機で乾かさないでください、とか、乾燥のしすぎには注意してくださいとか、詰め込み過ぎて乾燥すると縮みますよ、とか。
このアドバイス自体は正しいです。
本当に正しいのか?
見直すところはないのか?
ここでひとつ、疑問が湧くんです。
本当に縮んでいるのか?という疑問が。
お客さんからの相談で現物を見せてもらえば、縮んでいるかどうか、はっきりとわかります。
しかし、ただ相談というだけだと、言葉での相談なので現物を見たわけではないから詳しい状況まではわかりません。
僕らと同じ言葉を使っているからといって、同じ現象のことを話しているか?はわからないです。
縮む、というのは何を指しているのか?
同じ服と比べて丈が短くなっているのか?
明らかに大人サイズが子どもサイズになっているのか?
そもそも、なんで縮むと思ったのか?
すごい細かい屁理屈に聞こえるでしょ?
でも、共通認識で当たり前だと思っていることほど、実は違う認識でいる事はざらにありますから。
ここは細かく確認が必要です。
乾燥機で縮む、というのがもし丸まってシワになってる事を指しているのなら。
それは縮んでるわけではないんですよね。
それはその形に固定されただけで、シワがついてる状態。
アイロンかければ元に戻るし、なんならもう一度乾燥をかければ元に戻ったりします。
形が固定化されるのには条件があって、温度が下がるときに形が固定化されます。
つまり、乾燥機に入れっぱなしにしておくと、その状態で固まる、という事。
乾燥機で縮む、という人、心当たりありませんか?
もし、心当たりがあったら、乾燥工程が終わったらすぐ出して、ハンガーにかけてみてください。
粗熱が取れるときにシワも取れていきますよ。
そろそろ、クリーニング屋さんも相談の受け方を学ばなければいけないと思います。
僕らが知ってる事と、消費者がやってることは似てて違います。
そもそも、おかしくなる時点で、普通の工程とは違う事をしてるからなるんですから。
僕らの当たり前で話を聞いたらダメですよね。
やはり、きちんと相談できるところが必要だなあ。
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