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クリーニング屋の子どもは何も知らない。

クリーニング屋の子どもはなにも知りません。

僕もそうでした。


服の事も知らない、洗濯のことも知らない。

だって、知る必要がないんですもん。

どんな服を着ていても親がクリーニングをしてくれて、ちゃんと着ることができる。

洗ってもおかしくならないし、きちんとアイロンもかけてくれてる。

さらに言えば、着ている服も、親が選んでいるわけです。

クリーニング屋の知識で、服として必要な機能を備えているものを選んで着せています。


暖かいものだったり、動きやすいものだったり、汗をかいても吸ってくれる生地だったり。


とにかく服に関して、なにも考えなくても生きてこれちゃう、それがクリーニング屋の子どもたちです。


僕もそうして育てられてきました。



僕がクリーニングや服、素材や繊維の知識を得たのは大人になってからです。



元旦の夜の事です。



年に2回の飲みなれない晩酌をすると、ホットカーペットの誘惑に負けてそのまま寝落ちしてしまうわけですよ。

でも、ホットカーペットもずーっとついてるわけではなく、タイマーが切れると冷えるわけですね。


お酒飲んで熱ったところにホットカーペットの暖かさでぬくぬくになって寝てた人間が、ホットカーペットが切れたら一気に寒くなるじゃないですか?


寝てても気付くくらい寒くなり、これは何かかけてもらわなければ寝れない、となったんですね。

横には三男がいました。

録画したテレビを深夜まで見ていたみたい。



うちの居間には、ダウンの肌掛けが置いてあります。

大きくはありませんが、寝ている人にかけるには十分。

ダウンだからあったかいんですよ。


ホットカーペットが切れてきたので、横にいる三男に声を掛けたんです。



悪いけど、ダウンの肌掛けを掛けてくれないか?



すると、三男、部屋中を見渡しています。

三男の後ろに置いてあるのに。

そして、全然違うものを手に持ち、これ?と聞いてきます。



おい、ダウンを知らねえのか?と聞くと、そんなの知るか、との事。



クリーニング屋の息子ならダウンくらい知っとけ、と酔っ払ってる僕は悪態ついて三男の後ろにあるダウンの肌掛けを奪い取り、また居間で寝落ちをしたらしいんですね。



朝になり。

少し不機嫌な三男。

僕をみて、この酔っ払いめが、と罵ってきます。

ウザ絡みの件含め、この正月は彼にとっては迷惑だったんでしょうねえ。



で、ふと自分のことを思い返してみると、ダウンなんて知らなかったなあって。

多分、同じ歳の頃に親に言われてたら、同じように取れなかったかもしれない。

そう思うと、子どもは責められんなあと思うわけです。


と同時に、社会に出るまでに人並みに服のことや洗濯のことを教えておかないと苦労するな、とも。


これから少しずつ教えていきましょうか。

僕が子どもの頃の方がまだ良かったんですよ。

クリーニングの機械も全部別々で、みると何をしているのか?一発で分かりましたから。



洗う機械は洗うだけ。

脱水する機械は脱水するだけ。洗うために2台の機械が必要だったんです。

だから、全自動の洗濯機がやっていることを、全部手作業で2台の機械を行ったり来たりさせながら洗ってたんです。



洗ったら次は脱水をして。

そして濯ぎをして、また脱水をする。

そしてまた濯ぎと脱水を繰り返す。

みてればわかりますからね。


今は僕らの機械も全自動。

細かな設定は出来ますけど、ボタン押すだけだから、子どもたちには分かりづらいかも。



まあ、一から仕込みましょ。(笑)

厳しくね。(笑)

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