なぜクリーニングを選んで、と言わないのか?
とある所からこんなのがありますよ、と教えてもらいました。
それは、防汚加工されたネクタイのお話。
防汚、汚れを防ぐ加工がされているんです、生地に。
正確に言うと、撥水撥油加工と言いまして、水も弾く、油も弾く、だから汚れにくくなる、という加工。
これね、ネクタイとか靴とかに有効なんですよね。
汚れやすい位置にあるものなので、してあると確かに便利。
でも、いいことばかりではなく、デメリットもあるわけです。
ネクタイの縫製屋さんの三代目さんがやっていて、最近Twitterで頑張っている所の商品。
なぜ、防汚加工のネクタイを作ったのか?聴いた人がいるんですよね。
その理由を聞いて僕はとても残念な気持ちになったんですよ。
その理由はこちら。
ネクタイをクリーニングに出したら型崩れしやすい、と。
だから、クリーニングをしなくて済むように工夫をした、というんですよね。
これ聞いた時に、わかってねえなあって思ったんですよ。
方向性が違う、と。
とても熱心な方なのになぜこの方向で考えたんだろう、と思うと悲しくなりましたねえ。
こんな話をしているってことは、防汚加工のデメリットも知らないんじゃないかなあと思います。
すると、トラブルになったりすると思うんですよねえ。
何より、本当にお客さんのことを考えていたら、こんな話をするわけないよなあ、と思うわけです。
まず、僕が1番に不満を感じたのは、クリーニングをしなくて済むように、という考えで防汚加工をした事。
クリーニングをしなくて済むように、それは不可能です。
なぜなら絶対汚れるから。
防汚加工をしていたとしても、汚れるんですよ。
なぜか?というと、染み込むんです、汚れが。
撥水撥油加工というのは、水や油を弾く加工です。 しかし、弾いているのはほんの30秒ほどでそのうちスーッと染み込んでしまいます。
防汚加工は汚れを一旦弾きますが弾いている間に払わないといけない。
これが防汚加工のデメリットなんですよね。
さらに、加工の内側に染み込むわけですから、いざ汚れを落とそうとするとその加工剤をすり抜けないといけない、染み抜きが難しくなる、と言うわけです。
百歩譲って汚れが浸透しないとします。
それでも汚れは付いていますから、ネクタイの表面には付きますよね?
ね、汚れないことはないんですよ、結局洗わないといけないのは変わらないんです。
なるべくクリーニングをしなくてもいいように、こんな考えをしていたら、上記のデメリットも伝えず、ネクタイに汚れがついたら払ってくださいね、と言う大事な話も伝えないかもしれません。
防汚加工をするならここは大事な所です。
もう一つ、大きな不満があります。
それは、なぜクリーニング屋を選んでください、と言わないのか。
ネクタイをクリーニングしたら型が崩れる?それはどこのクリーニングを利用しての話でしょう?
どこに出してもそんなふうになると言うのなら仕方ないですが、クリーニング屋さんも技術の高いお店もあればパートさんたちにやらせているお店もあります。
自分たちが丁寧に作ったネクタイですよ、それをいい状態で長く利用してもらいたいんだと思うんですよね。
だとしたら、お客さんにもきちんとメンテナンスをしてください、と言うのは悪いことではないと思うんですよね。
そもそも、ネクタイは洗うように作ってないでしょう?
洗浄テストをしてますか?
生地ではなく、製品での洗浄テストです。
縫製含め洗うことに対応している縫製ではないと思うんですよね。
僕らの立場になってみてください。
洗うように作られてないものをきちんと洗うって凄くないですか?
きれいにしてくれて、型崩れを起こさないクリーニング屋さん、あるんですよ、絶対皆さんの近くに。
そこを探して出してください、と言うのは無理難題ですかね?
大事なネクタイだもの、お手入れもちゃんとしてください、と堂々と言いましょうよ。
アパレルさんは度々こうした間違いをします。
クリーニングすると傷むのでなるべく洗うな、とか。
確かにクリーニング屋さんも色々あるので全部がちゃんとしたクリーニングをするとは限らないのは認めます。
でもそれはアパレルだって同じでしょう?
いい服を作るメーカーもあればひどいメーカーもあるじゃないですか?
だからこそ、お店を選ぼう、服を選ぼう、と話すわけです。
それはクリーニングも同じ。
クリーニングも選ばなきゃダメなんですよ。
だから。
今回の話は、クリーニングする回数をなるべく減らすためにするのではなく、ネクタイをしている時にいい状態で着てもらうために防汚加工をして、クリーニングはいいクリーニング屋さんを選んでくださいね、と言うのが正解。
汚れない服なんてないんですよ。
人が着れば必ず汚れる。
汚れたら洗わなきゃまた着れないんです。
そんな洗わなくてもいい加工や洗わなくていい服はありません。
ここ、間違えちゃダメだよ。
服を着ると言うことをもっと真剣に考えた方がいい。
デザインや縫製だけではなく、それを付けて、洗ってまた着る、ここまで考えないとダメ。
アパレルも変わって欲しいですね。
そんな都合のいいものはないぞ、って気づいて欲しいです。
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