« ひとり。 | トップページ | 服に合った適切なお手入れをしましょう。 »

イヤになる時期。

年に数回、イヤになるなあ、と思う事があります。

まさに今がそんな感じ。

特にこの数年、洗濯をつたえていたりクリーニングを伝えていたりしているので特にそういう感情が湧き起こる事があるんですね。



僕らがやっている洗濯講座というのは、洗濯のやり方を教えるものではありません。

洗濯とクリーニングは衣生活には両方とも必要で、洗濯できないものをクリーニング、というものではなく洗濯の方が向いているもの、クリーニングの方が向いているもの、というし分け方をしています。


そして、この考え方の根本は、服をどう着たいか?というイメージがある、という前提で話をしています。


汚れたから洗う、という簡単な話ではなく。

またその服を着るために服は洗うんです。

匂いがしていたらイヤだ、シミがついていたらイヤだ、こんなイメージは皆さんありますよね?

他にもあるはずなんです。

縮んだらイヤだ、色が褪せてきたらイヤだ。

しわくちゃのままはイヤだ。

洗濯できる、という言葉にはこれらが全部ちゃんとしているという前提が含まれているのですが、あらためて言葉にしないんですよね。


洗って服がおかしくなるのは洗濯が悪い、やり方が悪い、と考えますが、服が悪いという事はあまり想像しないようです。


たしかに素材の特徴によってシワがついたりしますが、復元できないほどのシワがつくようならそれは服が悪い。

洗えば多少の縮みは出ますが、過剰な縮みは服が悪い。

ここを知る人はあまり多くありません。


要は服が大きく変化するようなものは服そのものに欠陥がある、という事なんですよね。


服は、着て洗ってまた着る、これが出来ないと服にならないわけです。

だから、服がちゃんと作られる、洗えるというのは服の基本性能になります。


これはアパレルの方にもメリットはあるんです。

色が褪せてきたり、縮んだり、シワが強烈についたり、これらは服をデザインしている人たちからすると、形を維持してくれてないと言うことになります。


売ったら後は知らない、というスタンスなら話は別ですが、そもそもデザインを考えている時点で、できる限り同じ状態で着てもらいたいはず。

だからこそ、洗えるように作る、変化の少ないように作るのはアパレル側にも通じるメリットになります。

また、それは作る側の責任です。


ようやく今日の本題に入れます。



この作る側の責任がどうにも通じないんですよね。

消費者が服にどんなイメージを持っているのか?

アパレルにどんなイメージを持っているのか?


すっごい信頼なんですよ。



例えば、ぼくらがこの服、おかしいです、と話した時に、こう返される事があります。


私が買っているメーカーでそんな事があるはずありません。



いやいや、アパレルの服の不具合なんてたくさんあります。

それを知らないのは仕方ないにしても、私が利用しているメーカーにそれはないって、信頼していないと出てこない言葉です。

で、そこには消費者が、メーカーが品質テストをしたり、素材を選んだり、きちんと作り込んだり、と言ったところまでやってくれているだろうな、と思っているわけですね。

そこまでこだわって作り込んでいる服なんだからそんなはずはない、と。



もし、もしですよ?

洗浄テストとかしてないと知ったら皆さんどう思いますか?

洗濯表示がJISからISO準拠の表示に変わってから素材ごとの洗浄テストではなく製品でのテストをしなければならなくなりました。

ところがこれをやってない、そもそも表示の内容が変わったことすら知らない、というふうに聞かされたら、どう思うんでしょうか?


僕はこれを無責任と思うんですよ。



服に含まれる品質を作り込んでいないんですから。

服を作るときに必要な知識はあります。

手触り、風合い、光沢。

でも、作る側は見た目の品質だけ見ていてはダメなんです。

吸湿性、発散性、それによる体への影響。

また縮み率、染色堅牢度、いろんな性能が関係してきます。

しかしこれも糸の太さや撚り方、染色のやり方によって変わってくる。

これらの複合的な知識を服に入れ込んで、服の安全性や快適性などを担保できるわけですよ。


しかし、アパレルの関係者と話をするとこの辺の話を軽視する傾向があるんです。

そんな細かい事を、と言われてしまうこともある。


あんたねえ、それが服の品質そのものじゃないか、と思うんですよね。


私たちは最高のものを作った、後はそれに合わせて洗いなさい。



そう言われているようでイヤになるんです。



先ほども書きましたが、服は洗えないとまた着る事ができません。

だから、まず第一に洗えるように作り込む事は大事な話です。


そして、もしファッション性を優先したいなら、きちんと洗浄テストをしてどの位までの強度があってどのくらいまでなら洗えるのか?洗濯表示としてつけなければいけません。



当たり前の話でしょう?



でも、この当たり前の話がアパレルの関係者には通じない。

それって服を理解してないって事なんですよ。



ファッションと実用性、いろんな側面のある服というものは、どういうものなのか?

服を着るという事はどういう事なのか?

自分たちの仕事の事を真剣に考えていたら、作って売るところで止まるはずないんです。

その後のことも当然想像する。

それは製造をしている仕事の責任ですよ。


だから僕ファッション関係者と話をするのが好きじゃない。

話が噛み合わなすぎるもの。

自分たちが無責任だと自覚してないし、ファッションで僕らを振り回そうとするし。


皆さんが洗濯で困っている原因の一つもアパレルがいけないんですよ。

きちんと洗浄テストしないで出荷してるんだから。

いい加減な表示をして参考にすらならないんだから。


あまりに横暴な話を聞いていると、ならメーカーが自分で洗えばいいじゃない?と思ってしまう。

自分たちで作ったものは自分たちで洗ってお客さんに返せばいいじゃない?

外注にも出さず、自分で洗濯機を導入して洗って返せばいいじゃない?

やってみたら分かる、いかにクリーニング屋さんがあなたたちの尻拭いをしてきているのか。



今ね、こんなふうに心が折れている時期です。

多分、もう少ししたらまた前向こうかな、と自然と思えてくる思いますけどね。

本当にイヤになっちゃうなあ。


| |

« ひとり。 | トップページ | 服に合った適切なお手入れをしましょう。 »

クリーニング」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« ひとり。 | トップページ | 服に合った適切なお手入れをしましょう。 »